ニューイヤーコンサート定番の“ラデツキー行進曲”~その作曲の経緯と時代背景~

あっという間の年末ですね。年末・年始、皆様はどのようにお過ごしですか?実家に帰省される方や旅行に行かれる方も多いのではないでしょうか?

そんな時、ふとその地域の音楽に注目してみると、意外におもしろい発見があるんです!今日はニューイヤーコンサートで定番の「ラデツキー行進曲」を取り上げながら、その歴史とウィーンの人々に親しまれている理由などについて考えてみたいと思います。

 

ラデツキー行進曲とは?


1848年にオーストリアの作曲家であるヨーハン・シュトラウスⅠ世が作曲した行進曲です。弦楽器の華やかな前奏のあと「タタタン、タタタン、タタ・タン・タン・タン」というお馴染みのメロディーに手拍子をのせることで有名ですね。

ちなみに、曲名になっている“ラデツキー”が、実はオーストリアの敏腕将軍の名前だということはご存知でしょうか。ラデツキーは、19世紀前半のオーストリア帝国では英雄的存在でした。このラデツキー行進曲は、彼の功績とオーストリア帝国の勝利を称えるために作曲されたのです。

 

ラデツキー将軍が活躍した時代のヨーロッパとは?


ラデツキー行進曲が作曲された19世紀は、ヨーロッパ中で革命や国際紛争が起こっていた時代です。18世紀後半に起きたフランス革命やナポレオン戦争によって一度は崩れかけた絶対王政制でしたが、1814年~15年に開かれたウィーン会議で復活し、再びヨーロッパの統治体制を“フランス革命以前の状態に戻す”という「ウィーン体制」が確立されました。ウィーン体制の樹立によって、フランス革命の合言葉であった「自由」と「平等」の精神が改めて否定されたのでした。けれど1848年2月に、フランス国内で絶対王政に反発した労働者階級が武装蜂起し、二月革命が起こりました。その勢いはオーストリア帝国にも波及し、同年3月には首都ウィーンで民衆による暴動が起きました。この暴動によって、当時のオーストリア帝国の宰相は追放され、政府が国民に対し憲法制定や自由主義改革を約束したのがウィーンの三月革命です。

 

ラデツキー将軍の功績とオーストリアの誇り


そんなオーストリア帝国にとって更なる脅威となったのは、ウィーンでの三月革命に端を発して、当時オーストリア帝国が支配していたサルデーニャ王国(イタリア北部)が起こしたイタリア独立戦争です。そして、この危機的状況の中で、見事サルデーニャ王国を鎮圧し、オーストリアを勝利に導いた人物こそが名将ヨーゼフ・ラデツキーです。このラデツキー将軍の勝利はオーストリア帝国中を沸かせました。この功績を祝して、ヨーハン・シュトラウスⅠ世が作曲した曲が、『ラデツキー行進曲』で、今なおオーストリアの愛国歌として親しまれているのです。なお、敗者側であったイタリアでもこの独立戦争を題材とした音楽作品が生まれています。ジュゼッペ・ヴェルディーによって作曲されたオペラ『レニャーノの戦い』です。まるでコインの裏表のように、二国間のある大きな事件をもとにそれぞれの立場の音楽が残されているというのは、なんとも興味深いですね。

 

ラデツキー行進曲がイタリア人にも受け入れられるわけ(私見)


上記のように、ラデツキー行進曲は実は非常に政治色の強い楽曲であり、またラデツキー行進曲だけでなく、19世紀に作曲された楽曲の多くは自国または隣国の革命に少なからず影響を受けているそうです。このラデツキー行進曲の作曲背景を知ったとき、ふと「イタリア国民はラデツキー行進曲をどんな気持ちで捉えるのかな」という疑問が浮かびました。反発心のような感情が生まれてしまうことはないのかな、と。実際にイタリアの方に質問できたわけではないですが、ラデツキー将軍が鎮圧したイタリア独立戦争後の双方の歴史をひも解くと、その疑問も少し薄れるように感じました。イタリアは1848年の独立戦争後、2度の大きな戦争を経て、イタリア半島を見事統一することに成功しました。一方で、オーストリア帝国は度重なる戦争によって徐々に国力を弱め、1938年にはアドルフ・ヒトラーによって、一度は完全に独立国としての姿を消すことになるのです。楽曲が素晴らしいことが現代でも親しまれる最大の理由だとは思いますが、一方でオーストリアが歩んできた時代背景もあいまって、『ラデツキー行進曲』は“純粋な愛国歌”としてオーストリア及び他国に受け入れられているのではないかと思いました。

 

年末・年始にどこかに旅行に行かれる方も多いと思いますが、そんなとき、是非その地域の音楽についても調べてみでください♪音楽をきっかけにますます楽しい旅になりますように!

 

 


2017年12月28日 | Posted in コラム, 音×旅 | タグ: , No Comments » 

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