音大生のキャリア紹介:ピアノ伴奏者 丸山 智代さん

編集(小)CD Launch (47)埼玉県出身。埼玉県立大宮光陵高等学校音楽科、武蔵野音楽大学ピアノ専攻を卒業後、渡英。英国王立音楽院(Royal Academy of Music) 修士課程ピアノ伴奏コースにて、伴奏・アンサンブルを専門に学ぶ。これまでに、声楽(歌曲・ペラアリア)、クラリネット、ヴァイオリン、チェロとの共演経験が豊富であり、「音楽的感覚が繊細で信頼できる伴奏者」としてソリストから評価を得ている。現在、埼玉および東京を中心に活動の幅を広げている。

ミュージックメイト(以下、MM):今日はお時間頂き、ありがとうございます。大学卒業後に会社員期間を経てイギリスにご留学され、音楽家としてますますご活躍中の丸山さんに、現在の働き方に至った道のりと今後のキャリアプランについて、お伺いできればと思います。

丸山さん(以下、丸山):宜しくお願いいたします。

MM:早速、丸山さんが大学をご卒業されてから今に至るまでの道のりについてお伺いできますか?

丸山:武蔵野音楽大学を卒業後、新卒でパソナに入社しました。(ミュージックメイト新卒採用「Wキャリア研修プログラム」)パソナに入社後は1年間、淡路島の地域活性のための“ここから村プロジェクト”に携わりました。

 

入社早々に淡路島のプロジェクトへ! 淡路島での生活とは?


MM:“ここから村プロジェクト”ではどんな業務を担われていたのですか?

丸山:ここから村プロジェクトはパソナ版アーティストインレジデンスのような取組みだったのですが、私自身もアーティストであり、運営サイドのパソナ社員でもあるというスタンスでしたので、業務は多岐に渡りました。ある時はアーティストとして淡路島内のイベントで演奏しつつ、また別のイベントでは逆に運営サイドとして、会場手配、アーティストのアレンジ、会の進行サポートなどを行っていました。イベント運営の他にも、クラシックのコンサートやマスタークラス、また座学形式の講座などの企画・運営にも携わりました。

MM:そこまで幅広い業務に携わっていらっしゃると、社会人1年目の仕事量としてはかなりのボリュームだったのではないですか?

丸山:そうかも知れないです。(笑)ただ、新卒で入った初めての会社がパソナだったので、当時は比較対象がなかったんですね。社会人ってこんなものか、と思っていました。

MM:恐れ入ります。(笑)アーティストとして演奏活動をしながら、パソナ社員としての仕事にも従事するというのは、モチベーションを保つのは大変だったのではないですか?練習時間などはどのように確保されたのですか?

丸山:演奏案件をもらえること自体がとても嬉しかったので、演奏することへのモチベーションは常にありました。しかし、淡路島は寮生活だったので、練習時間の確保は色々と工夫しました。まずは電子ピアノを買って、夜は譜読みし、朝も出社する前にも練習するようにしていました。また、会社の施設内にピアノが置いてあるので、業務の隙間時間や就業時間をずらすなど調整をして練習することもありました。就業時間の調整などは、演奏を「仕事の一部」として受けていたことと、何より会社の先輩方のご理解あってこその働き方でした。そして、自分からもたくさん先輩方に相談しましたね。自分の目指す働き方をするためには、何が必要でどんな形だとやりやすいのかをしっかりと伝えるようにしていました。

 

無我夢中の新入社員時代。そこで得たものとは?


MM:ご自身が働きやすい環境をつくるための働きかけも、しっかりとされていたのですね。淡路島ではどのくらい働かれていたのですか?また淡路島でのご経験で得たものはどんなことでしたか?

丸山:1年ほどです。大変勉強になったのですが、将来の音楽活動のことも考えると東京に帰って来たいという思いもあり悩んでいたところ、当時の上司の方の紹介で東京のレコード会社で働かせていただけることになったんです。ですのでパソナに入社しちょうど1年経った頃、パソナを退社し東京のレコード会社で働き始めました。淡路島で得たことはたくさんありましたが、一番大きかったのは“人との繋がり”だと思います。淡路島のプロジェクトには様々な方が関わっていらっしゃり、ベネズエラのエル・システマの立案者の1人の先生もいらっしゃったんです。その先生には英語、和声、アンサンブル、ステージング、音楽史などの音楽的な知識から、将来のことや日々の相談まで大変お世話になりました。また、レコード会社に転職できたきっかけも上司の方のご縁でしたので、やはり人とのつながりを得たことが一番大きかったと思います。

MM:きっと丸山さんが仕事や演奏活動に真摯に取り組まれていたからこそ、丸山さんを応援したいという輪が生まれたんですね。転職後のレコード会社では、どのようなお仕事をされていたのですか?

丸山:クラシックやジャズ部門の制作まわりの仕事です。CDの広報・制作、型番整理、コンサートの物販、コンサートの企画・運営、所属するアーティストの営業、パンフレット・チラシの作成、イベント当日のアーティストサポートなど、部内業務のアシスタントをしていました。CD製作の過程を知るのはとても面白かったです。

MM:本当にたくさんのお仕事をされていたのですね!こちらのレコード会社ではどのような働き方だったのですか?

丸山:週4日で働いていました。しかし、レコード会社で働き始めて1年が過ぎたあたりの頃、会社としてコンサートやイベント企画に力を入れていこうという流れの中で、もしやる気があるなら週4日ではなくフルタイムに切り替えて働かないかとの打診を頂いたんです。

MM:それは、音楽業界を志望する方からすれば、喉から手が出るほどのお話ですね。

丸山:そうなんです。とても嬉しいお話でしたが、やはり「演奏をしたい」という気持ちが強く、お断りしました。レコード会社での仕事も大変充実したものでしたが、もともと新卒でパソナに入社した際も「3年働いたあとは留学したい」と考えていたので、初心にかえったという感じでしょうか。

 

いざ留学!! イギリスと日本における伴奏シーンの違いとは!?


MM:ご自身の目標がしっかりしているからこそ、自分が進むべき道を迷わず選択できたのですね。そのあたりから、留学のご準備をされたのですか?

丸山:そうですね。まずは留学資金を貯めようと次のお仕事を探していたときに、パソナで働いていた頃の先輩から人手が足りないから手伝ってほしいと言われ、またパソナにで働くことになりました。

MM:そうですよね。パソナ復帰後は、ミュージックメイト担当としてご活躍いただきました。

丸山:パソナ復帰後は週3日間のペースでお世話になりました。そして8ヶ月働いたあと、社会人4年目の夏にイギリスへ留学しました。

MM:イギリスではどんなことを学ばれていたのですか?

丸山:専攻はPianist Accampanimentで伴奏専門のクラスだったので、伴奏の個人レッスンやアンサンブルレッスン、また4カ国語(イタリア、フランス、イギリス、ドイツ、)の歌曲の授業の伴奏サポートも必修科目でした。この授業では週1回あり毎週4~5曲の課題が出るので、それぞれの歌曲の特徴を理解したり、初見・譜読みの力が身につきました。

MM:なかなかハードですね・・・!授業の他にも音楽活動はされていたのですか?

丸山:もちろん、友人のレッスンやコンクールで伴奏をしたり、大学からも伴奏者募集の連絡が来るので、スケジュールや報酬に納得できれば依頼を受けていました。

MM:日本と比べてイギリスは演奏や伴奏の依頼は多いですか?

丸山:多いですね!シーズンによってばらつきはありますが、音楽家だけではなく、一般の方からの依頼もあります。たとえばイギリスには英国王立音楽検定(ABRSM)という検定があります。120年以上の歴史を持つこの検定では、グレードは1~8まであり、実技演奏とソルフェージュの試験を声楽・ピアノ・フルート・打楽器・・・などの様々なジャンルで受験できます。小学校に入るくらいの年齢から受験できますし、日本の英検くらい、一般の方に浸透しているんです。公の試験なので、グレード8を持っていると人にも自慢できますし、大学受験や就職活動の際にも有利とされています。音楽や演奏というのはまずは“しっかりと継続する”ことが大事なので、このグレードを保有していることでその姿勢が社会的にも認められ、評価されるようです。日本ではこういったグレード試験において、主催団体が伴奏者を用意しているところが多いですが、イギリスは受験者自ら伴奏者を手配するスタイルのため、このグレード試験が開催される時期は伴奏依頼も増えますね。

 

海外だからこその壁も!英国留学を経て、これからのこと。


MM:イギリスでは、まさに生活の中に文化や音楽が根付いているのですね!ちなみにイギリスではどのように生活され、ピアノの練習などはどのように行っていたのですか?

丸山:あるファミリーの家に下宿させてもらっていました。下宿先にピアノもあったのですが、練習は基本的に大学でしていました。私の通っていた大学では土日も平日も7:00~23:00の間練習室を使うことが出来ましたので、ほぼ毎日伴奏合わせや練習をすることができました。2日前からWEBで練習室を予約することが可能だったので、大学に行ったはいいけど練習室が空いてなかった、ということも避けられました。

MM:素晴らしいシステムですね。イギリスではどのくらいの期間勉強されたのでしょうか?

丸山:イギリスは授業のコースが幅広く、私は1年で修士を取るコースだったので勉強期間はちょうど1年間ですね。しかし、本来の修士は2年間で取得するものなので、授業や勉強は大変ハードでした。

MM:修士取得後はどのように生活されようと考えていましたか?

丸山:学内の卒業生向けオーディションなども多かったので、それを受けてイギリスに残ろうと思っていました。幸いにも、選択科目で取っていたオープンアカデミーというアウトリーチプログラムの研修員に選抜されたので、別の仕事と掛け持ちしながら研修員として経験を積もうと思ったのですが・・・。労働許可付きのビザが取れず、今は一時帰国中です。

MM:噂には聞きますが、ワーキングビザの申請はそんなに大変なのですか?

丸山:今はかなり厳しくなっていますね。労働許可の取得が難しくなった理由の1つに、雇用主側の負担が大きいことがあります。また、制度としても変わってきていて、今年から、現地での学生ビザから一般労働に必要なビザへの切り替えが出来なくなりました。学生ビザで渡英した場合は、一度帰国して母国から労働許可の申請をしなければなりません。海外で活動する上で大変なことのひとつに、このあたりのことですね。

MM:大学の研修員でも難しいとは・・・。引き続き渡英のご準備もされることと思いますが、丸山さんご自身としては今後どのような音楽家としてのキャリアを考えていらっしゃるのですか?

丸山:ピアノ伴奏をメインに活動を続けたいです。また伴奏プラスαでレッスンや音楽ワークショップなど、次世代の方の益になるような活動をしたいと考えています。渡英できればベストですが、もし叶わなかったとしてももう1度ヨーロッパへ行きたいですね。色々な文化に触れ、様々な考えを持った人々と知り合うことは、人間性を深めるためにも大変価値のあることだと思っています。そして、自分の中の節目である30歳以降は、それまでの知識や経験を日本でも伝えられるようになりたいなと漠然と考えています。

MM:とても素敵なプランですね。30歳の帰国後(?)は是非またパソナにも力を貸してくださいね!!最後に、現在学生の方向けにエールを頂けますか?

丸山:悩むことは色々とあると思いますが、とにかく悔いのないように、これだけはやっておきたいと思うことはリスクがあっても挑戦してください。TEDからの受け売りですが、私が好きな言葉で、「人生には3つのリスクがある。やってみて成功するリスク、やってみて失敗するリスク、現状維持のまま時間を無駄にするリスクだ」という言葉があります。これを聞いたときはハッとしましたし、本当にそのとおりだと思っています。

MM:何かを掴み取るチャンスって、若いうちの方が格段にありますよね。自戒をこめてですが、どうせリスクを取るなら是非行動に移す方を選んで頂きたいですね。本日はお忙しい中お時間頂き、誠にありがとうございました。これからもますますご活躍されますように!

丸山:ありがとうございました。

 

学内外の音楽仲間と♪

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学校内の練習室にて

学校内の練習室にて

 

 


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