【作曲家のコトバ】9月生まれの芸術家から考える~二流の●●になる必要はない~

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こんにちは。
例年は残暑の時期ではありますが、今年は少し早めに秋の気配を感じますね。

さて、今月から【作曲家のコトバ】シリーズとして、その月に関連する音楽家とともに芸術や音楽活動について想いを馳せたいと思います。

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1898年9月26日生まれの作曲家は・・・?


1896年にアテネでは記念すべき第1回近代オリンピック競技大会(現在のオリンピック)が開催され、日本では日清戦争での勝利を皮切りに、次は大国ロシアとの戦争があるのかないのか世論が二つに割れている、そんな時代にアメリカで生を受けたのがジョージ・ガーシュウィン(George Gershwin、1898年9月26日 – 1937年7月11日)です。父親はユダヤ系ロシア人で、ロシアでのユダヤ人迫害を恐れてアメリカに移民し、ガーシュウィンは移民2世としてニューヨークで生まれました。そんなガーシュウィンは、12歳のとき兄に与えられたピアノをきっかけにピアノと和声を習い、1919年に発表した歌曲『スワニー』が大ヒットとなり人気ソングライターになります。その後は、ポップスやミュージカル作品を多く手がけるとともにクラシック音楽の作曲にも取り組み、1924年には、あの有名な『ラプソディ・イン・ブルー』を発表。ジャズとクラシックを融合させた「シンフォニック・ジャズ」という新たな音楽ジャンルを生み出しました。

 

一流のガーシュインが二流のラヴェルになる必要はない


しかし、実はこの当時のガーシュウィンは管弦楽法に詳しくなく、ラプソディ・イン・ブルーも作曲家でアレンジャーでもあるファーディ・グローフェの協力を得て作曲されたものでした。その後も独学でオーケストレーションを学んだものの、権威あるクラシック作曲家のもとしっかりとオーケストレーションを学びたいという想いから、当時ヨーロッパで活躍していたモーリス・ラヴェルに弟子入りを願い出ます。その時のラヴェルの返答が、「あなたは既に一流のガーシュウィンなのだから、二流のラヴェルになる必要はないでしょう」というものでした。

 

オペラ「ポーギーとベス」


この回答を聞いたとき、おそらくガーシュウィンは落胆したでしょう。けれど、不遇にも負けない精神は偉大な成功者たちの共通点です。その後、1935年にはオペラ「ポーギーとベス」を発表しました。1920年初頭のアフリカ系アメリカ人の生活を描いたこの作品は、当時の黒人社会の様子を映し出した悲哀の物語です。“人種差別”をテーマとして取り上げた点や“出演者は全員黒人(1人だけ白人)”というこの作品は、当時大変斬新なオペラ作品として人々の目に映りました。初演こそ評判は良くなかったもののジワジワと評価されるようになり、現在では作中のアリア『サマータイム』がジャズ、ポップス、ロックなどのあらゆるジャンルでカバーされるようになりました。「ポーギーとベス」の創作をするにあたり、ガーシュウィン自身も黒人音楽を研究したというほど力を入れたこの作品は、アメリカで育ち、また自らも移民2世であったガーシュウィンだからこそ創りえた作品といえるのではないでしょうか。もしラヴェルに師事することになっていたなら、もしかしたら彼はヨーロッパ風の楽曲に魅了され、独自の作風を築くまでには至らなかったかもしれません。

 

オリジナルを追求し、自信を持って!


また、これは主観ですが、もしかしたらラヴェル自身もガーシュウィンがうらやましかったのではないかと思います。なぜなら、ラヴェルが活躍した19世紀後半~20世紀初頭のヨーロッパは、新しい芸術の形を求めて様々な芸術家たちが四苦八苦していた時代です。たとえば、芸術作品に【民族性】を取り入れるという手法に注目が集まっていたのもこの時期でした。(日本の浮世絵や工芸品はパリの美術家の間で大変な評判で、ゴッホやモネもこぞって日本の作品を模倣していました)そんな中、まだクラシック音楽界では成長段階であるアメリカで、クラシック音楽とアメリカ独自の民族音楽のコラボレーションを実現させたガーシュウィンに対し、「あなたの作品は十分に魅力的なのだから、自分のスタイルに自信を持って!」と伝えたかったのではないかと思います。

 

しっかりとした基礎の上に応用があるという考え方や、尊敬する師匠の下で芸術を学びたいという気持ちは音楽家であれば誰でも思い当たるところ。しかし、同時に“オリジナルのスタイルがある”ということも芸術家として大成するためには大切な要素なんですね。

後輩作曲家に対するラヴェルの温かさや、ガーシュウィンの情熱と挑戦心に改めて敬意を表しつつ、「自分」という音楽家について深く考えてみたい気分になりました。

 


2015年09月15日 | Posted in コラム | タグ: , No Comments » 

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